就職活動の早期化2010年11月12日 00:57

10日付けの朝日新聞で「早すぎる就活、経済界で見直し議論 大学側から悲鳴」という記事を見ました。 経団連が就職活動に関する「倫理憲章」の見直しを検討していて、年内か年明けには一定の結論を出すとのことです。 ただ、経済界には見直し論議には慎重な姿勢で望むべきとの意見も根強いようです。

大学の教育現場におりますと、まさに就職活動の早期化に対しては頭の痛い思いをしています。 講義もさることならが、出席重視のゼミにおいても、これまで4年の前期は出席者が半数程度になることもしばしばでした。 そのため、報告義務を課すこともままならず、私のゼミではこちらで用意した事例問題と判例資料を毎回配布して、その場で考えて議論を進めるというスタイルをとってきました(出席日数の少ない者にはレポートを課しています)。 そのかわり、3年生および4年生後期はしっかりと報告をしてもらい、資料収集やレジュメ作成能力を高めてもらってきました。

しかし、近時は、3年生の秋から会社説明会が始まるところすら出始めているそうで、専門知識の修得だけでなく、総合的な能力を高めることのできる良い時期を就職活動につぶされてしまうという危惧感を抱いています。 1,2年生で専門教育の基礎を築いた上で、3,4年生で応用力を高めること、とくにゼミ等での論理的思考力やプレゼンテーション能力の向上を図ることは、会社など社会に出てからも必要とされる、とりわけ重要な能力養成にあたると考えられます。 就職活動の無限定な早期化は、こういった教育を受ける機会を学生さんから奪ってしまっているということに気付いてもらいたいものです。

もちろん企業1社だけとか、ある業界だけで何とかできることではありませんから、経済界全体、そして教育機関、さらには国の関係機関などを含めて社会全体できっちりとしたルール作りに向けて努力すべき問題でしょう。 これまでの何度かの失敗を教訓にして、経済界にだけ問題を押し付けることなく、今度こそは「まとも」な改革案の成立に近づいてほしいと切に願います。

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