3班の報告について2005年11月27日 12:25

大変遅くなりましたが、3班による事例問題の報告(11月9日)についてのコメントです。

事例問題のテーマは、「動産譲渡担保における目的物件の自力救済的搬出行為と不法行為の成否」でした。 参考判例として、弁済期前の搬出行為については最判昭和53・6・23判時(判例時報)897号59頁(ページ)があり、期限後については最判昭和43・3・8判時516号41頁があります。

報告班は、まず問題提起を詳細に行ったうえ、譲渡担保の法的構成についての基礎的な解説をしてくれました。また、2004年に動産・債権譲渡対抗要件特例法(平成10年施行、平成16年改正)についても補足説明を加えてくれました。そのうえで、上記2つの判例を紹介して、弁済期限の前と後とに分けて、譲渡担保権者による目的物件搬出行為の可否について、とりわけ後順位担保権者との関係を意識しながら論じてくれました。

関連判例自体は古いものですが、新しい法律の話題にも触れてられていて好印象でした。また、レジュメは26ページに渡るもので、報告だけで1時間20分ほどかかりました(討論の時間をとるため、ゼミの時間を延長して対応しました)。これだけしっかりと準備をしてくれたことは高い評価に値します。ただし、さらに一段上へのステップとしては、ある程度コンパクトにまとめることも重要になってくるかと思います。

内容的には、譲渡担保権者による自力救済的搬出行為が認められる例外的な場面の基準について判例をベースに適切にまとめられていたことが良かったといえます。ただその際に、自力救済禁止の原則・例外と本事件との関連性に言及してもらえるとより良かったかと思います。つまり、自力救済は原則として禁止されるわけですが、「緊急性と手段の相当性」が認められれば例外的に肯定される、といわれています。この例外に関する一般基準が、譲渡担保設定者の倒産状態においていかに具体化されるべきなのか、という点が問題とされるわけです。

他方で、コンピューターやインターネットの発展によって、債権や動産の登録制度の整備が進みつつある昨今(いまだ不十分な面があることも否めませんが…)、債権・動産にかんする第三者対抗要件のあり方も変化しつつあります。このあたりの問題意識についても、今後深めていってもらえればと思います。

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